感染性胃腸炎について
冬から春先にかけての感染性胃腸炎(≒嘔吐下痢症)には、代表的なウイルスとしてノロウイルスがあり、俗に「おなかの風邪」といわれます。(ロタウイルスもあります)
感染力が非常に強く、集団発生することでよく問題となります。
牡蠣などの二枚貝の生食もこのウイルスの危険があり、高齢者や乳幼児は避けた方が無難です。
感染後の潜伏期間は数時間〜数日(平均1〜2日)で、嘔吐や下痢などの症状の持続時間は10数時間〜数日(平均1〜2日)です。
健康な成人であれば重症化することはまずありませんが、持病のある方、小児や、特に高齢者の方では合併症や体力の低下から症状が長引いたりすることがあります。
治療について
ウイルスに対する特効薬はありません。
抗生物質はウイルスには効かず、逆に下痢の期間を遷延させることもあるので通常は使用しません。
症状の持続期間は一般的に短いですから、重要なのは脱水症にならないための十分な水分補給です。
また、「五苓散(ごれいさん)」や「黄岑湯(おうごんとう)」などの漢方は症状の改善に有効です。
下痢止めも最初は使用せず、整腸剤ぐらいにしておきます。
水分を十分に取りましょう
食事は、冷たいもの、脂肪や繊維の多いもの、乳製品は避けた方が無難です。
吐き気が強い場合は、処方された吐き気止めなどの薬を適切に使用しながら、スポーツドリンクやスープなどで、水分を少量ずつ頻回に取ることを心がけて下さい。
吐き気止めの薬を使用しても吐き気や嘔吐がつらく、水分がとれない場合は、点滴による水分補給が必要ですから、近くのクリニックやかかりつけの先生などに相談されて下さい。
感染予防について
ノロウイルスの感染力は非常に強く、ほんの少し口の中に入っただけでも容易に感染してしまいます。
吐物や下痢の中には大量のウイルスが含まれており、排泄後の手洗い不足による感染や、周囲に飛散した吐物の水滴や下痢便のかけらが風に乗って舞い上がり、それを吸い込んで感染してしまう「飛まつ感染」などもあります。ですから、感染防止のための手洗いやうがいは重要です。
手洗いについて
最も重要なのは「流水・石けんによる手洗い」です。(流水で洗い流すことが最も重要です)
帰宅時および食事前には、ご家族全員が流水・石けんによる手洗いを行うようにします。調理や配膳時も同様です。
手洗い時の洗剤については、ノロウイルスに効果のある次亜塩素酸は手が荒れますので、不十分ではありますが液体石けんが基本的には推奨されます。
よく施設の入り口などに置いてある、(シュッシュッとする)アルコールでは死にませんので注意が必要です。
吐物・下痢便の処理について
吐物や下痢を掃除するときは、マスクと手袋を着用し(あるならゴーグルも)、乾燥しないうちに雑巾やタオルで包み込むように静かに拭き取り、ビニール袋に入れて破棄します。
乾燥しないうちに後述する消毒剤を事前に吹きかけるともっといいです。
その後に200倍に薄めた消毒剤(例えば、2リットルのペットボトルにハイターをキャップ2杯ぐらい)で、その範囲を広めに消毒します。
消毒剤は、塩素系(商品名:ビューラックス、ミルトンなど)、家庭用漂白剤(商品名:ハイター、ブリーチなど)などを使用します。
また、吐物などで汚れた衣服をそのまま洗濯機に入れると、他の衣服にウイルスが付着しますので、可能であれば、水洗いのあと、薄めた消毒剤で一度消毒することをおすすめします。
登校・出勤についての指導
下痢や嘔吐の症状が改善し、体調がよければ登校や職場復帰は可能です。
ただし、下痢の症状が改善しても、1週〜1ヶ月は便中へのウイルスの排泄が続きますので、トイレの後の手洗いは十分に行うことを心がけて下さい。